インプットし続けた創業期
銀行残高がみるみる減っていく状況だったが、起業当初から力を入れていたことがある。それはインプットをし続けること。起業し自らの手で事業を興す方が持つだろう感覚とは違う感覚で、私はスピンスレッドを立ち上げたからだ。
多くの人と違う感覚なので、もしかしたら理解できないかもしれないが、正直にスピンスレッド立ち上げ当初の私の心境を伝えておこうと思う。
それまでも、Webサイト制作については1つ1つ全力で作り上げてきたことに関しては、嘘偽りは全くない。その点は自信を持って言い切ることができる。ただ、知識・ノウハウの面については、明らかに力不足だったと言える。
なぜなら、それまでずっと、私はクライアントの言う通りに“作っていただけ”だったから。Webサイト制作のプロとして、クライアントの本質的な課題に踏み込み、価値あるWebサイトを提案することを、ほとんどしていなかった。
この点については、実は共同経営を解消するかどうか迷い始めた頃から、既に感じていた。そこから本格的に学び始めはしたが、十分に学べたというにはほど遠い状況で2回目の起業を決断した、というのが本当のところだ。
そのため、元同僚と立ち上げた前の会社を出て、スピンスレッドを立ち上げたものの、本音を言えば、Web制作会社としてやっていく自信など、ほとんどなかった。
この点については、程度の違いこそあれ今も持ち続けている。当時に比べて圧倒的な知識やスキルを身に付けたとはいえ、どこまで行っても完璧なものなどできないと思っているから。
仮にその時点でベストを尽くし完璧だと思うようなサイトができたとしても、時間の経過とともに「もっとこうした方が良かった」と思うことは必ずでてくる。それが普通であるし、何より新しい技術もどんどん出てくるのだから、ある意味では当たり前だ。
だからこそ、「まだまだ」という想いを常に持ち続ける。
ただし、「どこまで行っても完璧なものなどはできない」からといって、手を抜いても良いはずはない。要は「この時点での100%の力を出し切っているか?」が私の中で最も重要な判断軸だと思っている。その点に関してはもちろん自信がある。
このように、私は実力不足という劣等感を抱えての2度目の起業だったため、スピンスレッドを立ち上げてからは、常に書籍を大量に買って読み込んだり、セミナーに参加するなどインプットをし続けていた。
そんな中、大きなターニングポイントになったのは、日本トップクラスのWeb制作会社と言われる株式会社ベイジさんの「戦略的ウェブ制作講座」を受講したことだった。2020年の第1期だけでなく、2023年に開催された第2期にも参加し、日本トップクラスのノウハウを得たことが何よりの自信となった。
特に大きな学びとなったのは、デザインやページ作成といった実制作に入る前の、戦略・設計を重視していることだった。クライアントの事業や商材はもちろんのこと、クライアントの顧客、そしてカルチャーや大切にしている価値観といったクライアント自身のこと。
こういったことを徹底的に理解した上で制作を進めるやり方は、当時大きな衝撃を受けたが、今も当社のWebサイト制作の土台となって活きている。
このように当社にとってはターニングポイントになった講座ではあったが、2020年の第1期の受講を、実は私は一度、見送った。受講したくてしょうがなかったが、資金が枯渇しそうだったからだ。
——だがこの時、コロナの給付金で一時金が入った。
その使い道に、私は悩みに悩んだ。資金が完全に枯渇した時のために内部留保しておく選択肢が頭を過った。一方で「ここでリスクをとって前に進め」と叫ぶもう一人の自分がいた。
自分の中にいた二人の人格がせめぎ合い、簡単に結論を出すことができなかった。私の記憶が正しければ、講座の定員40社だったのだが、決断できない間に定員に達して募集がストップになった。
この時「募集したくてもできない。致し方ない」と諦める自分と、「何やってんだ!チャンスを逃したじゃないか!」と落胆する自分がいた。
しかし、数日後、「キャンセルが出たため、若干数を再募集」という案内メールが届いた時、「これは何かある。チャンスだ」と捉え、意を決して申し込んだ。
その後の流れが大きく変わったのは、ベイジさんの「戦略的ウェブ制作講座」のおかげだとはっきり言える。だからこそ「毎月資金が減り続ける恐怖の中で、よく一歩前に進む決断をしてくれた」と、当時の自分に、今心から感謝している。
