べき論との分かれ
前職で一緒だった同僚とは、共同経営者として約7年半、苦楽をともにしてきた。しかし、起業して6年が過ぎた頃、少しずつ考え方にズレを感じはじめた。そしてそのズレは、日を追うごとに大きくなっていった。
そのズレが大きくなるにつれ、私の頭の中には「このまま一緒に経営を続けるべきではないのではないか?」という問いが、頭を支配するようになっていた。
一方で、起業という道を一緒に踏み出したこと、創業して1年も経たないうちに倒産の危機が訪れたこと、奇跡の大型案件受注でなんとか首の皮一枚つながりピンチを乗り越えたこと、野球メディアを立ち上げたこと、野球部専用のホームページを開発し販売してきたことなど、それまで一緒に苦楽を共にしてきたことも、もちろん頭にはある。
何よりその同僚は、小学校時代からの幼なじみ。そういった関係性もあって、「続けるべきではない」と思う一方で、「このまま一緒に経営を続けるべき」という強い思いもあった。
その頃、よく考えていたのは、長くテレビで活躍しているお笑い芸人のコンビのことだった。普段は決して仲が良いわけでないが、テレビの前では普段の関係性など全く関係なく一緒に立ち続けている人たちがいる。その人たちもいろいろ思うところはお互いにあるだろうが、ずっと一緒に仕事をしている。
その長い芸人生活の間には、コンビ解消などの危機もあったはずだが、そういった危機を乗り越え、今があるのではないか?だったら、簡単に共同経営の関係を解消するのではなく、まだまだ続けていくべきなのではないか?そんなことを繰り返し自問する時期が続いていた。
そんな中、ある時、ふと気づいた。「xxxxすべき」「xxxxxべきでない」など、全てが“べき論”で思考していることに。
その時、心の声が聞こえた。「べき論じゃなくて、お前はどうしたいの?」と、怒りを帯びた口調で語りかけてくるもう一人の自分がいた。
この声のお陰で、ようやく決断をすることができた。それは、同僚と決別し、一からWeb制作会社を立ち上げることだった。
「べき論じゃなくて、お前はどうしたいの?」
この問いが生まれたのは、ある2人の影響があると思っている。
一人目は栗原正峰さん。野球繋がりで縁を持った、昭和51年生まれの同い年。教師をしながら、子どもたちに夢を持つ素晴らしさを伝えるために講演活動もする。呼ばれれば全国どこへでも喜んで飛んでいく。また、書道家としても活動し、海外に行き自らの作品を売り込むなど、常に自分の心に沿っていきる。
この縁が元で栗原さんが主催する書道グループに所属することになり、それがきっかけで、2025年8月現在、今なお2120日以上続いているSNSへの投稿の一日一筆がスタートした。
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もう一人は、青空応援団 団長の平 了さん。ボランティア活動がきっかけで何度かお会いする機会があり、お話する中で、自分の信念を貫ぬく言動に大きな影響を受けた。
二人に共通するのは、周りの評価は全く意に介さず、自分が信じる道を突き進むということ。常識にとらわれず自由に生きるその姿は、当時「共同経営を解消するか」「同僚と一緒に続けるか」迷い続けていた私には、眩しいくらいに輝いて見えた。
こうしたタイミングで二人に出会えたことには感謝しかない。二人の生き方を見て「自分の心の声に沿って生きよう」と、腹を決めることができ、会社を去るという決断を下したのだった。
同僚との考えのズレに気づいてから、自分の道を歩むことに決めるまで、霧の中を彷徨っているような感覚だった。何が正解か分からず、ひたすら自問する日々が続いていた。——でも、今ならはっきり分かる。
正解は“探す”ものではなく、“つくる”もの。
こうして半年以上悩んだ末、2018年12月末をもって、一緒に立ち上げた会社を離れ一人で再出発することにした。同時に7年半の共同経営も終了した。
7年半の経営を通して感じた反省点は2つ。
- 責任の所在を明確にすること
- 会社として大切な価値観、方向性を言語化すること
2.に関しては、たとえ一人であっても明文化しておく必要があると痛感した。
初めての起業で得た学びを次のステージに活かすため、私は一人で新しい会社を立ち上げる準備を進めていった。
