忘れられない出来事
夏の合宿も終わり、最後の秋のリーグ戦は残念ながら優勝争いに加わることはできなかったが、学生生活最後の“あの打席”だけは、一生忘れないだろう。
私を避け、必要がなければ私に話しかけることがなかった後輩たちが——
「最後の打席だぞ、しっかり打て!!」
とベンチから大声で叫んでいた。半年前には考えられなかった光景がそこにはあり、涙でボールがにじんで見えなかった最終打席。あのほんの数分間は、私にとって心底幸せな時間だった。
主将として味わった経験は、たった1年の間の出来事でしかないが、振れ幅が大きかったからこそ、その後の私にとってかけがえのない財産となった。
ESの高い組織とは、スタッフだけが充実感を持って働くことではない。スタッフを導くリーダー自身も大きな充実感を得ることができる状態でもあるのだ。このことを、身をもって実感したのは他でもない野球部での経験だった。
ここまで野球部の話を続けてきたが、締めくくる上でもうひとつ触れておきたいことがある。私が3年の時にコーチとして来て、4年時に正式に監督となった方。包み隠さずいうと、当時の私にとって最も鬱陶しい存在だった。
しかし、今では1年に数回1対1で食事をご一緒させていただくような関係になったことをどうしても伝えておきたい。当時、ご自身の仕事をしつつ、週3日も練習に来てくださり、勝つために私たちを本気で叱り、本気で選手やマネージャー達に向き合ってくれた。
当時はそんなことを感じる余裕はなかった。いや感じてはいても、頭ではそれを認めたくもなかったし、考えたくもなかった。
仕事をしながら週3日も野球部のために時間を使い、嫌われるのを厭わず本気で選手に接することがどれほど大変か。自分が社会人となり仕事するようになってから、その行為がどれほどありがたいことであったかを理解するのに時間はかからなかった。
それを理解した瞬間から、監督への感情が180度変わった。憎しみではなく、感謝が心に溢れた。
「本気の想いは、時間はかかっても必ず届く」
今、私がそう信じられるのは、この元監督のおかげだ。
そして、いま、私の人生の師である。人生とはどこでどうなるか本当に分からないからこそ、「今をどう生きるか?」が何より大切なのだと、心から思う。
