小規模企業への転職
実は転職した先の代表からは、それまでも何度も誘っていただいていた。その都度「フランフランが好きでここでずっと働きたいので」とお断りしていて、入社する気持ちは全くなかった。
ところが、私が本社に異動になり、お店単体でなく会社全体を見渡す楽しさに目覚め始めたタイミングで、再び声をかけていただいたのが転職に舵を切った大きな要因だ。
本社に異動になっていなければ、おそらく転職することはなかった。人生にはタイミング次第で物事が大きく動くことを、私自身、身をもって体験した。
転職した会社は音楽の楽譜の制作や、CDのジャケットやポスターなどの紙媒体のデザイン制作をメイン業務とする20名弱の小さな会社。音楽もデザインもまったくの門外漢だったが、私は人材事業の立ち上げメンバー2人のうちの1人として声をかけられた。
まさにゼロからの立ち上げだったため、派遣スタッフとの面談内容、面談の際に使う面談シートや契約書、請求書などの書類。もう、ありとあらゆるものを自分たちで作り上げ、事業をスタートした。
小規模な会社であるがゆえ、備品の発注なども総務などが勝手に発注してくれるのではなく、欲しいものを伝えて発注してもらえなければ手元に届くことはなく、基本的に何から何まで自分で行う必要があったことは、大きな衝撃だった。
この時になって初めて、フランフランがいかに恵まれた環境だったかに気づいた。小さな企業であれば当たり前のことも、規模が大きい企業にいた私には分からないことだらけだった。だが、この時の経験が実は後の人生に役立っている。
起業すれば、それこそ何から何まで自分で行う必要があるが、小規模企業での勤務経験がなく、もしフランフランの後に起業していたらもっと苦労していただろうと思う。そういう意味で、フランフランを退職して早い段階で、こうした当たり前のことに気づけたのは良かった。
仕事の方に話を戻すと、人材部門の売り上げは順調に右肩上がりで増えていったものの、利益を出すことがなく赤字が続き、結果的に数年で人材部署は閉じることに。
その後、デザイン制作部門のリーダーとして異動になるも、右も左も分からないなかで四苦八苦しているうちに、社長が変わることに。新しい社長の下で1年ほど仕事をしたが、どうしてもその新しい社長と価値観が合わなかったため、人材部門を一緒に立ち上げた同僚と退職し、起業の道へと踏み出すことにした。
