野球が仕事の一部に
息を吹き返した私たちは、何か仕掛けようと動き始めた。お互いが野球経験者だったこともあり、「野球を使って面白いことができないか?」と模索。その結果、リアルタイムで試合情報を配信する野球専門のポータルサイトを立ち上げた。
実際に私たちが球場に足を運び、ノートパソコンを膝に乗せて、管理画面に試合情報を打ち込みながらリアルタイム配信するという、今考えてもなかなかクレイジーな運営スタイル。
配信した試合数は合計で約1,000試合。私一人でも約500試合は見に行ったと思う。今思えば、よくやり続けたものだと思う。
球場では試合情報を配信しながら、Googleアナリティクスでリアルタイムのユーザー数を確認していたが、立ち上げ当時は閲覧ユーザー数が1人という時間帯もザラだった。
1人というのは私のことで、私以外の閲覧ユーザーはゼロ。この状況がしばらく続き、正直やっていて虚しさを感じることも多々あった。しかし、それでも続けた。
すると、1人が5人になり、そして10人に増えていく。本当に少しずつ、少しずつだが確実に閲覧してくれるユーザーも増え、いつしかリアルタイムのユーザー数が100人に。
最終的には同時に1,000人が閲覧してくれる規模にまで成長し、月間PV数としては約100万PVのメディアに成長した。
そんな、ゼロから立ち上げた自社メディア運営の中で、特に嬉しかったことがある。それは、球場で目の前の席に座っていた女性が、まさに私たちのメディアをスマホで閲覧しているのを見つけた時だ。
思わず声をかけそうになったほど。あの、何とも言えない喜びが込み上げてきた瞬間のことは、今でもはっきり覚えている。
このメディアを広告媒体として育て、広告収入を得るという構想はあったが、そこまでの価値に育てることは最終的にできなかった。単純に力不足だったと、今は思っている。
メディア運営の一方で、このポータルサイトの技術を活用して「野球部専用Webサイト制作サービス」をリリース。件数は多くなかったが、大学や社会人野球部のサイト制作に関わらせていただいた。
特に印象深いのは、毎年のようにプロを排出する名門の亜細亜大学硬式野球部のサイト制作に携わったことだ(現在はリニューアルし新しいサイトになったため、私たちが関わったサイトは今はもう閲覧することはできない)。
公にするのはここが初めてだが、亜細亜大学野球部のWebサイトやグッズ、またその他さまざまなところで使用されている「全力疾走」の文字は、実は私が書かせてもらったものだ。
2022年、ドラフト4位で西武ライオンズに指名された青山美夏人選手がチームの寮に入寮する際、「全力疾走」の文字が印刷されたタオルを広げ、テレビやネットなど至るところで文字が映し出されたのは、私の密かな誇りだ。
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こうして野球に関連する差別化商材は持っていたものの、売上の中心はあくまで受託のWeb制作。決して手を抜いていた訳ではなかったが、受託のWeb制作に関して、ある時期から「ただ作っているだけ」という感覚が芽生え、「このままで良いのだろうか?」と自問し始めるようになった。
野球に特化した他社とは違うサービスがあるとはいえ、それが事業の柱として成立するほどのインパクトではなかった。「差別化されたサービスを伸ばす」という考え方もあったが、私自身は「Web制作会社として、クライアントの事業に貢献するサイト作りにもっと本気で向き合うべき」と考えるようになっていた。
