主将としての大きな挫折
いよいよ最上級生となるわけだが、私は主将としてチームを引っ張る立場に。それと同時に1年前に就任したコーチは正式に監督になった。必然的に私は監督と最も近い距離で接する存在となり、当然ミスがあれば私が矢面に立って真っ先に怒られる。そして私には、その内容をチームメンバーに伝える役目がある。
しかし、当時の私はあまりにも人間的に、そしてリーダーとして未熟だった。組織を率いるトップとして明確な意志を持たなかったばかりか、怖い存在であり続けた監督からの指示を自分のフィルターを通すことなくそのまま伝えていた。
今思えば、リーダーとしての役割を全く果たしていない。はっきり言ってリーダー失格。言葉を単に上から下に伝えるだけの存在であれば、リーダーなど不要である。ただの連絡係なわけだから。
私が野球部に入部した頃の雰囲気とは全く違うにしろ、再びチームの雰囲気は悪い方向へ向かっていった。後輩からは慕われていないことは、私自身はっきりと感じていた。
——それもそのはず、当時を思うと本当に申し訳なく思うが、当時は「後輩なんて先輩の言う事だけを聞けばいい」と考えていた。
体育会系の部活で今より上下関係が厳しい時代だったのは間違いないが、それでも後輩も一人一人感情がある人間だ。その当たり前にすら気づかず、彼らをまるでモノのように捉えていたのだから、慕われるはずがない。そんな状況で慕われる方が不自然だ。
厳然たる上下関係があるにせよ、そんな考え方のリーダーについていきたいと思う人間はいない。明らかに自分のやり方が間違っていた。
この時期に私が感じていたことといえば、ただただ“孤独”ということ。同期から、チーム作りについて指摘を受けたことはあるにせよ、「お前のやり方はついていけない」と直接的に言われたことはなかったにもかからず、同期からも一人孤立しているように感じていた。
今思えば、悩んでいるなら自分から相談すればいいし、そもそも同期からも疎外され孤独だと考えてること自体がエゴでしかなかった。
こんな状況のチームがまとまるわけもなく、一体感がない状態が半年以上続く。今振り返ると、まさにESが低い組織の条件がそのまま当てはまるようなチーム状態。今思うと同期や後輩、マネージャー、監督やコーチ、選手の父兄、OB・OGの方々など、野球部に関係する方々には申し訳なかったし、お恥ずかしい限りだ。
こういったチーム状態を作った要因の1つに、後輩に対して負い目を感じていたことも大きく影響していた。そのせいで、明らかな間違いに対して指摘できない時もあった。
野球の実力において、後輩に完全に負けていたのだ。私個人だけでなく、チーム全体としても。守備面ではピッチャーやキャッチャー、ショート、セカンド、攻撃面でばクリーンアップなど、チームとしての重要な役割は全て後輩達が担っていた。
そんなことから、リーダーとして言うべきことがあっても言い出しづらさを感じていた。後輩をモノのように見ていたにも関わらず、嫌われるのを恐れて言うべきことを言えないリーダーだった。そんな人間がリーダーの立場に立ち続けてはいけないことは今ならよく分かる。
チームのため、相手のためと外側に向くべき矢印が、そもそも自分に向いていたことすら当時は気づかなかった。そして、自分は中心選手でなければ、チームを引っ張れないと思い込んでいたことが、何より大きな間違いだった。
レギュラーでなくても、リーダーとしてチームを引っ張っている人はいくらでもいる。仮に技術では劣るとしても、練習に取り組む姿勢は誰にも負けない、誰よりもチームのことを考え実践するなど、他の要素で秀でるものがあれば、メンバーから信頼を得てチームは引っ張れるものだ。
練習で手を抜くことは一切なかったが、当時の私はそんなことすらも考えられず、チーム作りが思うようにいかにことに対する敗北感を背負い込んでいた。
雰囲気が悪い状況が続き、だんだん精神面でも追い詰められ(実際には自分で追い詰め)、毎日その日をどう過ごすか?と目の前のことしか考えられなくなった。
部室で1人小さくなって泣いたことも1度ではない。「もうこのまま逃げ出してしまおうか?」と何度思ったことだろうか。それほど精神的には参っていた。
そんな状況ではあったが、それでも何とかこの雰囲気を変えたいという思いだけは持ち続けた。
